口腔ケアについて
口腔ケアとは?
口腔ケアとは、歯磨きなどで口の中をきれいに保つだけでなく、健康保持や口腔機能向上のためのリハビリなどを含んだ幅広い内容のことをいいます。歯や歯茎、舌、粘膜、入れ歯を含む口の中の清掃、口腔内や口周りのマッサージ、咀嚼や嚥下のトレーニング、リハビリなどが含まれます。虫歯や歯周病などの口腔内トラブル予防だけでなく、健康的な日常生活を送るために口腔ケアは重要なものとされています。
日常的・専門的な口腔ケア
口腔ケアは、大きく分けて日常的な(本人もしくは介護者が行う)ケアと専門的な(歯科医師や歯科衛生士が行う)ケアに分かれます。 日常的な口腔ケアに加えて、かかりつけ歯科による専門的な口腔ケアを定期的に行うことが大切です。歯に問題があった場合以外にも、お口が乾く、食べにくい、飲み込みにくいなど、お口に関するトラブルがある場合には相談してみましょう
日常的な口腔ケア
- うがい
- 粘膜・舌の清掃
- 歯磨き
- 入れ歯の清掃
専門的な口腔ケア
- お口の状態に見合った口腔清掃アドバイス
- 歯石除去など日常的にはできないケア
- 口腔機能の維持や回復のための指導やケア
- 食事介護へのアドバイス
口腔ケアの目的
口腔ケアには次のような目的があります。
虫歯・歯周病の予防
虫歯(う蝕)と歯周病は、歯を喪失する大きな原因※1となっており、令和2年(2020年)の厚生労働省の患者調査の概要によると、1日あたりの虫歯の患者数は約29万人、歯肉炎及び歯周疾患は約51万人と報告されています。※2
歯周病等はどちらも口腔細菌が原因で引き起こされます。
口腔ケアにより口腔環境を清潔に保ち、しっかりと予防することが重要です。
- ※1(財)8020推進財団 第2回永久歯の抜歯原因調査報告書
https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/Tooth-extraction_investigation-report-2nd.pdf(2022年10月現在) - ※2厚生労働省 令和2年(2022)患者調査 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/suikeikanjya.pdf(2022年10月現在)
抜歯の主原因(全体) ※1
口臭の予防
呼吸や会話をするときに、口から出る息がにおい、他人が不快に感じるのが口臭です。
口臭の主な原因物質は、揮発性硫黄化合物である硫化水素(卵の腐敗臭)、メチルメルカプタン(野菜や魚の腐敗臭)、ジメチルサルファイド(生ごみ臭)の3つの臭気物質です。
これらは、はがれた口腔粘膜上皮や食物残渣などのタンパク質が嫌気性の口腔細菌によって分解されることにより産生されます。
虫歯や歯周病に侵されている歯肉組織、舌苔(舌の表面に付着した白い苔のようなもの)が主な産生部位だと考えられています。
口臭の発生原因を把握し、舌苔由来の口臭は舌苔の除去、歯周病由来の口臭は歯周病の治療をしっかりと行うことが大切です。
- 参考:
- (財)8020推進財団 How to 口臭予防
https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/kenko/howto.pdf(2022年9月現在)
味覚の改善
舌の表面には、味蕾とよばれる味覚を感じる器官があります。
味蕾は水に溶けた味覚物質により刺激をされますので、口腔乾燥があると味を感じにくくなります。
また、舌苔があると味蕾への刺激を遮ってしまうため、同じく味を感じにくくなってしまいます。
口腔乾燥については原因による適切な対処を行い、人工唾液や口腔保湿剤等によるケアが重要です。舌苔がある場合は、丁寧に取り除きましょう。
味蕾は卵形をしていて、上部(先端)の味孔を介して味刺激が入り込みます。
誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎と肺炎をあわせた死亡率の割合は、第4位に相当します。
また、誤嚥性肺炎で亡くなる方は3.1%であり、決して少ない割合ではありません。
老化や脳血管障害の後遺症などによって、飲み込む機能(嚥下機能)や咳をする力が弱くなると、口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなります。
その結果、発症するのが誤嚥性肺炎です。
なかでも寝ている間に少量の唾液や胃液などが気管に迷入して起こる不顕性の誤嚥は、本人も自覚がないため、繰り返し発症することが多いのです。
体力の弱っている高齢者では命にかかわるケースも少なくない病気です。
誤嚥そのものは完治することが難しいため、口腔ケアによって細菌や食べかすを減らし、口腔の清潔を保つことが安全かつ効果的な予防法です。
- 参考:
- 厚生労働省 令和2年(2020) 人口動態統計
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/gaikyouR2.pdf(2022年9月現在) - 厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-011.html(2022年9月現在)
主な死因の構成割合
口腔機能の維持・回復につながる
口腔には、「咀嚼」、「摂食・嚥下」、「味覚」、「発音・発声」といった生命維持やコミュニケーションにとって重要な機能をもっています。※10
これらの口腔機能が低下すると、食欲低下による低栄養となり、免疫力や体力の低下が引き起こされ、QOLの低下を招く可能性があります。そうなると、他人とのコミュニケーションにも支障をきたしてしまいます。
口腔ケアを行い口腔を清潔に保ち、必要に応じて摂食・嚥下機能のリハビリ等を行うことが、口腔機能の維持・回復につながります。
- 参考:
- ※10編集/荒川浩久ほか:口腔衛生士テキスト口腔衛生学-口腔保健統計を含む-,学建書院 2009:p5-8
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